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大阪高等裁判所 昭和35年(ネ)135号 判決 1963年8月21日

理由

被控訴人が訴外島信一に対し昭和三一年一二月二〇日金二〇〇、〇〇〇円を弁済期昭和三二年三月一五日の約定で貸与したこと、その際控訴人が訴外島振出の被控訴人主張の約束手形に裏書したことは、いずれも当事者間に争がない。

(証拠)を総合すると、「訴外島信一は製材製函業を営んでいたが、その事業資金をえるため、昭和三一年一二月頃被控訴人に対し金借を申入れたところ、被控訴人は訴外人には信用がないため資力ある者の裏書手形の差入れを要求したので、島は自己振出手形に控訴人に裏書を依頼する旨申入れた結果、被控訴人は控訴人の裏書手形を差入れた場合には融資に応ずる旨回答した。そこで、訴外島は控訴人に対し被控訴人の右意向を伝え、同人より融資を受けるにつき訴外人振出の本件約束手形に裏書してほしい懇請したところ、控訴人はこれを承諾し、直接被控訴人に島に対する金員融資を依頼するとともに、右約束手形に裏書署名したので、島は右手形を被控訴人に差入れ同人より手形割引の方法で昭和三一年一二月二〇日本件金員の貸与を受けた。」ことが認められ、右認定に反する証拠はない。

ところで、金銭消費貸借上の債務の支払を確保する目的で振出された手形に、右手形が金融に使用されることならびに貸主が特に自己の裏書を要求している事実を知りながら、借主の求めに応じてこれに裏書した者は、特にその責任を手形上の責任に限る旨明示の意思表示をなす等特段の事情のない限り、右手形によつて担保される消費貸借上の債務についても保証債務を負担する意思を有し、自己に代り右借主をしてその意思を表示すべき権限を与えたものと推認すべきである。これを本件についてみるに、叙上認定事実によれば、控訴人は訴外島が被控訴人より金員を借用するに当り、右債務支払確保のために控訴人の裏書ある約束手形の差入れを要求された事実を告げられ、島の求めに応じてこれに裏書し、島は右手形を差入れたうえ、被控訴人から、その割引によつて融資を受けたものであるから、特段の事情の認められない限り控訴人は右手形により担保される本件貸金債務についても、保証債務を負担する意思を有し、島をして自己に代りて被控訴人に対しその旨意思表示をなさしめたものと推定すべきところ、本件においては右推定をくつがえすに足る特段の事情は認められない。しかして、前認定のとおり本件主債務は製材製函業を営む商人たる訴外島がその営業資金として借受けた商事債務であるから、控訴人は右訴外人と連帯して保証の責に任ずべきことは明らかである。控訴人は最高裁判所昭和三五年九月九日の判例(民集一四巻一一号二一一四頁)を援用するが、右判例は、自己の信用を利用させる意味で約束手形の共同振出人となつた者に連帯保証債務負担の意思を推認すべきか否かに関するもので本件とはその事実関係を異にするから、本件には適切ではない。

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